横須賀市の観音埼公園でストレッチをする猫。
このあたりは東京湾の入口に当たるので、江戸時代末から海防の拠点となり、明治時代の砲台跡も3箇所、残っています。アジア太平洋戦争で徴発されて海没した民間船員の慰霊碑もあります。約2500隻・6万人の死者は、死亡率では旧海軍を上回ると言います。そして公園の隣には防衛大学校があります。
戦争と平和について考えさせられるこの地で、自由にのびのびと体を動かせる猫が、うらやましい。
世の中こんなもんで委員会 2023年6月22日
いじげんの少子化対策
6月21日、岸田首相は記者会見で今後の重要課題3点について述べました。①国内投資(2021年の自民総裁選では「新しい日本型資本主義 新自由主義からの転換」と言っていましたね。あまり転換したようには見えませんが)、②令和版行財政改革(たしか「令和版所得倍増」とも言っていましたね)、そして③少子化対策。
4月1日に「こども家庭庁」が発足しました。内部部局350名、2つの児童自立支援施設(もと感化院、教護院)80名。長官の渡辺由美子さん(子どもへの食料・教育支援をしているNPO、キッズドアの理事長と同姓同名なのはとても紛らわしい)はキャリア官僚、もと厚生労働省の子ども家庭局長です。ご自身の家族については発表がないので、子育て経験がおありかどうかは分かりません。
6月13日に内閣官房の「こども未来戦略会議」が発表した「こども未来戦略方針」を読んでみました。「3つの基本理念」として①若い世代の所得を増やす ②社会全体の構造・意識を変える ③全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」とし、財源は徹底した歳出改革等でまかない増税はしない、としています。この言葉だけ見たら、本当に全部実現したらと願わざるを得ません。
具体化にあたっては、やはり社会の意識改革と「人と予算」の手当てが肝でしょう。
吉富芳教授は、今だに男性優位政治を進める自民党高齢幹部がガンだと指摘しています。桜井啓太准教授は「子育て罰」という言葉を使い、結婚しない、こどもを持たないことが合理的選択になってしまっている社会を告発しています(光文社新書『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』)。
子育ては母親の責任、と押し付けてきた結果が、少子化となって現れてきているのでしょう。21日に世界経済フォーラムが発表した男女格差報告では、日本は146か国中125位でした。
保育、学校、学童、病院。どこでも人不足、予算不足で悩んでいます。冒頭に述べた21日の首相記者会見で岸田首相は、少子化対策の財源については何も語りませんでした。軍拡予算をようやく今年度分までは見当を付けて、先行きがまったく不透明なのに、いじげん(異次元)の少子化対策にヘタに手を打って、ていじげん(低次元)の少子化対策に終わらぬよう、監視していく必要がありそうです。
おりおりの猫2
トルコ最大の都市、イスタンブルで見かける猫の多くは地域猫のようです。特定の飼い主はいなくて、みんなで世話をしている。町中が猫カフェのような感じといいますか。猫小屋はよく掃除されているし、餌やりもされているので、テーブルに飛び乗って食べものをさらうような猫はいません。猫をいじめる人がいないので、猫たちは悠々と歩いて誰にでもなつきます。おかげで毛並みの美しい猫が多いですね。
イスラームの創始者ムハンマドはムエザという名の猫を溺愛していたそうですし、古代に山猫を飼い慣らして家猫にしたのは地中海で対岸のエジプトですから、トルコの人々の猫好きは筋金入りなのでしょう。
世の中こんなもんで委員会 2023年6月8日
ウクライナはなぜ負けないか
昨年2月24日始まったロシアによるウクライナ侵略戦争は、長期戦になりました。ウクライナ軍は専守防衛に徹して交戦を続けています。経済力でも軍事力でも圧倒的な差があると思われていたロシアに、なぜウクライナは敗北しないのか。この強さはどこから来るのか。
もちろん、2014年のロシアによるクリミア併合以後、米欧による軍事支援からウクライナ軍の近代化が急速に進んだことは大きいと思いますけれども、ウクライナのデジタル国家化の影響にも注目すべきでしょう。
報道によれば、ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル変革大臣は戦争開始2日後、米国の電気自動車テスラのCEOイーロン・マスクに、衛星による通信網スターリンクの提供を要請し、マスクは翌日に応じました。これによりウクライナ国内外で通信インフラが破壊されても通信が可能になり、市民は自分のスマホで敵の動きを自軍に知らせることができるようになりました。
フェドロフは弱冠32歳。2019年にデジタル変革大臣に就任すると、2024年までに国民へのサービスを100%オンライン化することを目標にして、パスポートも、納税手続きも、出産登録なども、そのようにしました。おかげで何も持たず国外に逃れた人もウクライナ語で教育が受けられるし、失われた資産の補償請求もできる。海外からの民間経済支援は主に暗号資産によるものだそうです。わずか数年でこれだけのシステムを作り上げた手腕は、台湾の新型コロナ対策で大活躍したデジタル大臣オードリー・タンと双璧とされます。
それに引き換え、日本のデジタル庁の実力には暗澹たるものがありますね。はじめから批判が集中していたマイナンバーカードの信頼性は地に落ちました。登録情報が漏れるどころか最初から間違っている。氏名は漢字表記のみ、性別は男女のみ、生年は元号表記、と超内向き。健康保険証とのひもづけなど、どだい無理ではないでしょうか。