核兵器のない世界へ?
岸田文雄さんは一昨年、『核兵器のない世界へ』という本を書いています。「『核兵器を世界から全て無くす』という戦いにおいて、人類がいつの日か、力を一つに合わせていくことができないはずがない、と私は信じています。」と「はじめに」に書いている。さすが広島地盤と思ったら、じつは二世議員で東京生まれ、東京育ち。核兵器をなくすための道筋をつけてくれるかと、G7広島サミットに期待するほうがバカだったのかも。「いつの日か」は遠い遠い未来のことだったのですね。
バイデンさんたちは広島平和記念資料館を見学して、被爆者の証言を聞いたけれども、合わせて40分だったそうです。広島を訪れる修学旅行生たちよりも短い。「強烈な印象を受けた」などのコメントは事前に準備していたかも。
米国の大統領はいつでも、核攻撃の命令を出せるような機器の入った「核のフットボール」とか「核のボタン」と呼ばれるブリーフケースを随行員に持たせていますから、バイデンさんも当然、これを携えて平和資料館入りしたのでしょう。
5月19日にサミットで採択された「’核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」という文書、読んでみました。7カ国語での発表でなく英語だけが正文で日本文は外務省仮訳、というのもひっかかるけれども、中身はもっと変。ロシアに核兵器を使うなと冒頭で述べて、中国と朝鮮に核拡散防止条約を守って核実験はするなと書いている。G7に参加している米英仏はもちろん核保有国で、日本もNATO参加国もみんな核共有あるいは核の傘の下にいるわけですよね。核兵器で身を守っている国々が、中朝ロの核だけは許さないと世界を分断している。
文書は核兵器禁止条約にはまったく触れていません。核軍縮は言うけれども、どのように、いつまでにどれだけ核兵器を減らすのかという道筋も目標も、まったく書いていません。これでは広島・長崎の人々ががっかりするのもアタリマエ。