ウクライナはなぜ負けないか
昨年2月24日始まったロシアによるウクライナ侵略戦争は、長期戦になりました。ウクライナ軍は専守防衛に徹して交戦を続けています。経済力でも軍事力でも圧倒的な差があると思われていたロシアに、なぜウクライナは敗北しないのか。この強さはどこから来るのか。
もちろん、2014年のロシアによるクリミア併合以後、米欧による軍事支援からウクライナ軍の近代化が急速に進んだことは大きいと思いますけれども、ウクライナのデジタル国家化の影響にも注目すべきでしょう。
報道によれば、ウクライナのフェドロフ副首相兼デジタル変革大臣は戦争開始2日後、米国の電気自動車テスラのCEOイーロン・マスクに、衛星による通信網スターリンクの提供を要請し、マスクは翌日に応じました。これによりウクライナ国内外で通信インフラが破壊されても通信が可能になり、市民は自分のスマホで敵の動きを自軍に知らせることができるようになりました。
フェドロフは弱冠32歳。2019年にデジタル変革大臣に就任すると、2024年までに国民へのサービスを100%オンライン化することを目標にして、パスポートも、納税手続きも、出産登録なども、そのようにしました。おかげで何も持たず国外に逃れた人もウクライナ語で教育が受けられるし、失われた資産の補償請求もできる。海外からの民間経済支援は主に暗号資産によるものだそうです。わずか数年でこれだけのシステムを作り上げた手腕は、台湾の新型コロナ対策で大活躍したデジタル大臣オードリー・タンと双璧とされます。
それに引き換え、日本のデジタル庁の実力には暗澹たるものがありますね。はじめから批判が集中していたマイナンバーカードの信頼性は地に落ちました。登録情報が漏れるどころか最初から間違っている。氏名は漢字表記のみ、性別は男女のみ、生年は元号表記、と超内向き。健康保険証とのひもづけなど、どだい無理ではないでしょうか。