いじげんの少子化対策
6月21日、岸田首相は記者会見で今後の重要課題3点について述べました。①国内投資(2021年の自民総裁選では「新しい日本型資本主義 新自由主義からの転換」と言っていましたね。あまり転換したようには見えませんが)、②令和版行財政改革(たしか「令和版所得倍増」とも言っていましたね)、そして③少子化対策。
4月1日に「こども家庭庁」が発足しました。内部部局350名、2つの児童自立支援施設(もと感化院、教護院)80名。長官の渡辺由美子さん(子どもへの食料・教育支援をしているNPO、キッズドアの理事長と同姓同名なのはとても紛らわしい)はキャリア官僚、もと厚生労働省の子ども家庭局長です。ご自身の家族については発表がないので、子育て経験がおありかどうかは分かりません。
6月13日に内閣官房の「こども未来戦略会議」が発表した「こども未来戦略方針」を読んでみました。「3つの基本理念」として①若い世代の所得を増やす ②社会全体の構造・意識を変える ③全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」とし、財源は徹底した歳出改革等でまかない増税はしない、としています。この言葉だけ見たら、本当に全部実現したらと願わざるを得ません。
具体化にあたっては、やはり社会の意識改革と「人と予算」の手当てが肝でしょう。
吉富芳教授は、今だに男性優位政治を進める自民党高齢幹部がガンだと指摘しています。桜井啓太准教授は「子育て罰」という言葉を使い、結婚しない、こどもを持たないことが合理的選択になってしまっている社会を告発しています(光文社新書『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』)。
子育ては母親の責任、と押し付けてきた結果が、少子化となって現れてきているのでしょう。21日に世界経済フォーラムが発表した男女格差報告では、日本は146か国中125位でした。
保育、学校、学童、病院。どこでも人不足、予算不足で悩んでいます。冒頭に述べた21日の首相記者会見で岸田首相は、少子化対策の財源については何も語りませんでした。軍拡予算をようやく今年度分までは見当を付けて、先行きがまったく不透明なのに、いじげん(異次元)の少子化対策にヘタに手を打って、ていじげん(低次元)の少子化対策に終わらぬよう、監視していく必要がありそうです。