世の中こんなもんで委員会 2024年2月8日

自衛官募集に協力する練馬区

防衛省が発行する『防衛白書』には「募集対象人口の推移」というグラフが掲載されています。自衛隊に入隊する可能性のある32歳未満の若者の数ですが、2023年に1745万人だったのが40年後には1044万人になると予想されます。いま自衛官の定数が247,154人のところ現員は227,843人、旧軍の「兵」にあたる「士」の充足率は75.6%。仕事がきつい、不祥事が多いというので辞めていく自衛官が年に5000人。とにかく人が足りず、今後はさらに募集が困難になります。

というので、自治体に自衛官募集の手伝いがさせられています。7月ごろには高校・大学卒業予定者、つまり18歳、22歳の若者に自衛官募集のダイレクトメールが送られてきますが、そのための名簿を提供しているのが自治体です。住民基本台帳から氏名、生年月日、住所、性別の4情報を提供するわけですが、その方法は自治体によってさまざまで、封筒に貼ればすぐに使える宛名シールまで作って自衛隊に提供するところまであります。また4情報以上に保護者の情報や電話番号も提供する自治体もあります。練馬区では4情報の対象者名簿を閲覧させ、書き写させるという方法をとっています。

このようなサービスは自治体の義務なのか。自衛隊は個人情報を自由に得ることができるのでしょうか。自衛隊法施行令には、防衛大臣は自治体の長に自衛官又は自衛官候補生の募集に関し「必要な報告又は資料の提供を求めることができる」とあります。また住民基本台帳法には、国は必要に応じて住民基本台帳を「閲覧させることを請求することができる」とあります。つまり自治体は閲覧・提供を求められても応じる義務はありません。実際に1741ある全国の市区町村のうち、自衛隊に電子あるいは紙媒体で情報提供をしているのは1068,閲覧を許可しているのは534。139自治体は協力していません。

近年、自治体に申し出れば本人の個人情報の自衛隊への提供を断ることのできる自治体が増えています。18歳、22歳の全員に「自衛隊に入りましょう」という文書が届くのが良いことなのか。警察官や消防士、あるいは学校教員の場合でさえ、そんなダイレクトメールが届くことはありません。