美術館の建て替えは必要か
練馬区立美術館の建て替え計画が進行しています。2月19日の区議会区民生活委員会に基本設計概要が報告されました。隣接する福祉施設・サンライフ練馬を廃止し、貫井図書館と複合した大きな美術館をつくる計画です。約90億円をかけ、竣工は2028年の予定です。しかし材料費・工事費が急騰して大阪万博も開催が危ぶまれている現在、このまま進めて大丈夫でしょうか。そもそも老朽化してもいない美術館を建て替える必要があるのでしょうか。
立て替え計画が始動したのは、2014年に前川燿男区長が就任して区政改革を始めてからです。2017年の公共施設等総合管理計画に美術館再整備が登場、2018年に東京芸術大学の秋元雄史教授を館長に迎え(昨年度から伊東正伸氏に交代)、2021年には再整備基本構想素案が発表されました。この時点で、国宝を展示できる施設、海外美術館との交流、などのコンセプトに疑問が出され、建設費・維持費の区政への圧迫や、福祉施設を廃止して敷地を増やしての大型化が心配されていました。また、小さくても企画で勝負して全国から観客を集めてきた実績へのリスペクトも感じられませんでした。そこで「練馬区立美術館を考える会」が発足し、貫井図書館・サンライフ練馬の利用者とともに区議会への要求運動を進めてきたのですが、残念ながら運動の広がりが見られませんでした。区議会では、日本共産党とインクルーシブな練馬をめざす会の議員を中心に追及されています。
平田晃久氏による基本設計概要を見ますと、建物の周囲をスロープが囲み、屋上庭園につながっています。「富士塚」のイメージだそうです。せっかく大型化したのに展示に使えるスペースが限られますし、開放的なスロープや屋上から近隣の住宅が丸見えになります。これまで入り口が別で独立性の高かった図書館は美術館に取り込まれ、4偕までの吹き抜けに面した「本に囲まれた空間」にするといいますが、調べ物や読書に適した環境でしょうか。
膨大な費用をかけながら、核燃料再処理工場や辺野古基地のように将来が見通せず立ち枯れになる危険を回避するために、美術館建て替え計画はあらためて検討する必要があります。