国籍・戸籍のこと
都知事選挙運動のなかで蓮舫さんは、父親が台湾籍の人であるために、ネガティブキャンペーンが未だに行われていました。
蓮舫さんの父親、謝哲信さんは日本が統治していた台湾、要するに日本だった時代の台湾生まれで、高校卒業後に日本に渡り教育を受け、事業を始めました。ですから生まれたときは日本人ですが、日本が戦争に負けて植民地を手放すと、日本は朝鮮・台湾出身者の日本国籍を抹消してしまい、謝さんは中華民国籍になりました。さらに日本が大陸中国と国交を回復して中華民国と断交すると、日本では台湾を国として認めなくなりました。
蓮舫さんは生まれた時に父親の戸籍に入りました。母親は日本国籍でしたが、日本の戸籍制度では選択の余地はなく、日本国籍にはなれませんでした。しかし1984年に日本の戸籍法が改正されて、22歳までは父母どちらかの国籍を選べるようになったので、蓮舫さんは日本国籍選択宣言をしました。このように戦後になっても、日本の植民地政策と戸籍制度に翻弄されてきたわけですね。
いま本籍を明記した戸籍制度などというものは、日本にしかありません。いわゆる部落差別の原因になっています。戦前の家制度の名残、男社会の名残で、戸主というものはなくなりましたけれども戸籍筆頭者というものがあります。離婚後300日以内に生まれた子は元夫の戸籍に入るので、それを拒むと無国籍になって、パスポートも取れません。戦後、占領軍は日本の戸籍制度を家単位から個人単位にするよう勧告しましたが、3世代戸籍を2世代戸籍に変えただけでした。
日本統治下の朝鮮には戸籍制度があり、韓国にも続いていましたが、韓国は夫婦別姓です。そして2005年に韓国の憲法裁判所は、両性の平等を定めた憲法に違反するとして、戸籍制度を廃止してしまいました。
米国では、バラク・オバマ元大統領の父親はアフリカのケニアの人ですし、俳優のアーノルド・シュワルツネッガーさんはオーストリア生まれですが、カリフォルニア州知事になりました。誰も生まれを問題にしたりはしません。
人は誰でも生まれ育ちや性別によって差別されることなく、ひとりの独立した人間として、その個性、能力に応じて働けるような、そんな社会になればいいなと思います。