世の中こんなもんで委員会 2024年6月6日

東京都税の使い道

小池都知事は2016年、都知事に立候補するにあたって政策として「7つのゼロ」を掲げていました。待機児ゼロ、介護離職ゼロ、残業ゼロ、都道電柱ゼロ、満員電車ゼロ、多摩格差ゼロ、ペット殺処分ゼロ。実現したらすばらしいと思っていたのですが、本当に実現したのはペットの殺処分が減っただけです。ペットは大事にされるようになりましたが、都民は大事にされていませんね。

じつはこの「7つのゼロ」という標語は、かつて1967年から1979年まで3期続いた美濃部都政の標語「8のゼロと10の初めて」のパクリです。

美濃部さんの「8のゼロ」は次のようなものでした。老人医療無料化。妊婦健診無料化。予防接種無料化。公害健診無料化。し尿くみ取り無料化(まだトイレの水洗化が普及していなかったのです)。小学生以下の動物園など都立公園入場料の無料化。担保なし・保証人なし融資の信用保証料肩代わり。生活保護世帯の上下水道料金の無料化。これを全部実現したのです。国ができないことを都がやった。まさに人にやさしい政治です。

その後の都政は悪くなる一方で、老人医療費の窓口負担は2割、収入によっては3割になってしまいました。国の福祉政策が貧しくても、東京都が補填すればいいだけの話なのですが。口先だけの小池都政と約束を守った美濃部都政。これだけ違います。

東京都はお金がないから人にやさしくできないのか。まったく違います。東京都は全国唯一、地方交付金、つまり国からの補助金を受けずにやっていける、税収入の多い自治体です。2022年度の都財政は31億円の黒字でした。その豊かな収入が、公園をつぶして都市再開発に使われている。税金はどこに使うべきか、都政を変えるとはどういうことか、考える機会が7月7日にやって来ます。

おりおりの猫15

手洗い場で水を飲む猫。手をかざせば自動的に水が出てくることを学習して自分で水を出したのですが、その手(前足)が水を掬うには不適当だったようです。体をぬらすことを嫌う猫が多いなかでは勇敢なことかもしれませんが、アメリカン・ショートヘア種は好奇心の強い猫が多いので、こういうこともできるのですね。

世の中こんなもんで委員会 2024年5月7日

サンヤツが荒れている

新聞の第一面下の広告をサンヤツと言います。3段分を8つに割っているので。伝統的にここは書籍広告を掲載することになっていて、老舗の出版社は月に一度、新刊本の広告を出し、読者はそれを見て書店に足を運ぶ。教養主義が生きていた時代の習慣がかろうじて生き残っているわけです。スペースは縦10センチ、横4.5センチしかありません。使える文字は明朝体とゴシック体に限られていて、図版も使えない。どのようにデザインするかが見所なのですが、たくさんの情報を押し込もうとすると、どんどん大きくなってきた新聞の本文の文字よりもはるかに小さい文字になります。

ところが。本が売れない。出版社は広告料が払えない。新聞の方も発行部数が昨年は2000年と比べても半分にまで落ちて(読売1027万→642万、朝日842万→374万、毎日402万→177万、日経303万→158万、産経201万→97万)、広告効果は小さくなりました。そこでサンヤツ広告には宗教系、自費出版系、ハウツー本などなどが増えてきました。新聞社のほうでも書店のほうでも、そんなもの本じゃないよ、というわけにはいきません。

ネット上の情報は玉石混淆で石が9割、とも言われます。ニュースも正規の新聞のデジタル版でなくニュースサイトの切れ切れのものばかり見ていると、どれがフェイクかわかりにくくなります。新聞の信頼度は落ちていると言っても、まだ新聞には何重ものチェック機能があります。

とにかく本屋さんに行って、せめて月に1冊、なにか購入していただければありがたいのですが。書籍は編集者と校閲者が内容と表現をチェックするだけでなく、内容に合わせた文字の組み方、紙の質、表紙のデザインも考えて一冊一冊作っているのです。本がもう少し売れれば、新聞のサンヤツも生き返るでしょう。

おりおりの猫14

ベンチで眠る猫。近づいても平然と寝ているのは無防備なようでも、猫は聴覚が鋭く敏捷なので、危険を感じれば逃げ足は速い。そもそも猫の名は「寝る」「好む」から来たと言われるくらい、昼間も良く寝ていますが、本来は明け方とか夕暮れのような薄暗いときに狩りをし、他の時間帯は体力温存のために寝ているのだそうです。
眠る猫といえば日光東照宮東回廊の彫刻「眠り猫」が有名ですけれども、この猫は目を閉じているだけで、睡眠中のようには見えませんね。

世の中こんなもんで委員会 2024年4月4日

ピストルと小銃

イスラエル兵はパレスチナの人々の腰を狙って小銃を撃ちます。小銃弾はピストルの弾よりはるかに強力で、当たると砕けて体内で拡散し、相手を倒します。即死でなくても確実に戦闘力を奪えます。

自衛隊が使う小銃に「アタレ」と片仮名で書いてあるのは「当たれ」というおまじないではなくて、「安全」「単発」「連発」の切り替えスイッチです。近接戦闘ではなぎ払うように連発すれば確実に相手に当たる。スポーツカメラマンが連射で撮影して決定的瞬間を狙うのと似ています。

その小銃を、自衛隊員は入隊するとすぐに各自に与えられて、分解、掃除、組み立ての練習を繰り返しさせられます。銃剣を付けて相手を刺殺する練習もさせられます。実際に人間を相手に小銃を使わざるを得ないような事態が来ないように願うばかりです。

敵を倒す練習をしている自衛隊とは違って、警察は犯罪容疑者を逮捕して裁判にかけるために銃を使います。ピストルですね。危害が加えられる危険があれば、まず威嚇、さらに相手の反抗力を奪うために銃を使います。ピストルは小銃に比べて破壊力が小さく、銃身が短いですから近距離でないとまず当たらない。それでも警官が武装していることで、犯罪の抑止力になると思われているのでしょう。

それにしても、自衛隊と警察に多数の銃器があって、使い方の練習をした経験のある人がじつにたくさんいる社会が安全なのでしょうか。各家庭に銃があるような米国、警官も銃を持たない英国などと比べてどうなのか。さらに言えば、平和の祭典であるはずのオリンピックにライフル競技があっていいのか。考えてしまいます。

おりおりの猫13

広島の保護猫カフェにいた里親募集中の猫。まだ若く愛嬌のある猫なので、すぐに貰われて行ったのではないでしょうか。猫カフェでは抱き上げてはいけないというルールがあるところが多いようですが、この猫は勝手に膝に乗ってきました。ノラ生活をしたことのない恵まれた猫なのでしょう。なお、この写真は学術社の今年のカレンダーに採用されました。

世の中こんなもんで委員会 2024年3月5日

美術館の建て替えは必要か

練馬区立美術館の建て替え計画が進行しています。2月19日の区議会区民生活委員会に基本設計概要が報告されました。隣接する福祉施設・サンライフ練馬を廃止し、貫井図書館と複合した大きな美術館をつくる計画です。約90億円をかけ、竣工は2028年の予定です。しかし材料費・工事費が急騰して大阪万博も開催が危ぶまれている現在、このまま進めて大丈夫でしょうか。そもそも老朽化してもいない美術館を建て替える必要があるのでしょうか。

立て替え計画が始動したのは、2014年に前川燿男区長が就任して区政改革を始めてからです。2017年の公共施設等総合管理計画に美術館再整備が登場、2018年に東京芸術大学の秋元雄史教授を館長に迎え(昨年度から伊東正伸氏に交代)、2021年には再整備基本構想素案が発表されました。この時点で、国宝を展示できる施設、海外美術館との交流、などのコンセプトに疑問が出され、建設費・維持費の区政への圧迫や、福祉施設を廃止して敷地を増やしての大型化が心配されていました。また、小さくても企画で勝負して全国から観客を集めてきた実績へのリスペクトも感じられませんでした。そこで「練馬区立美術館を考える会」が発足し、貫井図書館・サンライフ練馬の利用者とともに区議会への要求運動を進めてきたのですが、残念ながら運動の広がりが見られませんでした。区議会では、日本共産党とインクルーシブな練馬をめざす会の議員を中心に追及されています。

平田晃久氏による基本設計概要を見ますと、建物の周囲をスロープが囲み、屋上庭園につながっています。「富士塚」のイメージだそうです。せっかく大型化したのに展示に使えるスペースが限られますし、開放的なスロープや屋上から近隣の住宅が丸見えになります。これまで入り口が別で独立性の高かった図書館は美術館に取り込まれ、4偕までの吹き抜けに面した「本に囲まれた空間」にするといいますが、調べ物や読書に適した環境でしょうか。

膨大な費用をかけながら、核燃料再処理工場や辺野古基地のように将来が見通せず立ち枯れになる危険を回避するために、美術館建て替え計画はあらためて検討する必要があります。

おりおりの猫12

サビ猫(黒と茶の不規則模様の猫)は顔の毛色がこんなふうにカーニバルの仮面のようになることがありますね。この猫は面相も声も良くないけれど人怖じしないので地域でかわいがられていたのですが、毛並みがかなり貧相になっているのを見かけて以後、姿を見せなくなりました。野良猫ではなくて猫小屋で飼われている外猫だったようです。飼い猫の平均寿命は15年ほどと延びましたが、完全な野良猫の寿命はわずか4年程度と言われます。野外で暮らすのは楽ではない。動物愛護管理法の改正でも猫の放し飼いは禁止されていないものの、原則、室内飼育が推奨されています。しかし外に出ずに野性味を失って猫かわいがりされている猫などに魅力は感じないのですが。

世の中こんなもんで委員会 2024年2月8日

自衛官募集に協力する練馬区

防衛省が発行する『防衛白書』には「募集対象人口の推移」というグラフが掲載されています。自衛隊に入隊する可能性のある32歳未満の若者の数ですが、2023年に1745万人だったのが40年後には1044万人になると予想されます。いま自衛官の定数が247,154人のところ現員は227,843人、旧軍の「兵」にあたる「士」の充足率は75.6%。仕事がきつい、不祥事が多いというので辞めていく自衛官が年に5000人。とにかく人が足りず、今後はさらに募集が困難になります。

というので、自治体に自衛官募集の手伝いがさせられています。7月ごろには高校・大学卒業予定者、つまり18歳、22歳の若者に自衛官募集のダイレクトメールが送られてきますが、そのための名簿を提供しているのが自治体です。住民基本台帳から氏名、生年月日、住所、性別の4情報を提供するわけですが、その方法は自治体によってさまざまで、封筒に貼ればすぐに使える宛名シールまで作って自衛隊に提供するところまであります。また4情報以上に保護者の情報や電話番号も提供する自治体もあります。練馬区では4情報の対象者名簿を閲覧させ、書き写させるという方法をとっています。

このようなサービスは自治体の義務なのか。自衛隊は個人情報を自由に得ることができるのでしょうか。自衛隊法施行令には、防衛大臣は自治体の長に自衛官又は自衛官候補生の募集に関し「必要な報告又は資料の提供を求めることができる」とあります。また住民基本台帳法には、国は必要に応じて住民基本台帳を「閲覧させることを請求することができる」とあります。つまり自治体は閲覧・提供を求められても応じる義務はありません。実際に1741ある全国の市区町村のうち、自衛隊に電子あるいは紙媒体で情報提供をしているのは1068,閲覧を許可しているのは534。139自治体は協力していません。

近年、自治体に申し出れば本人の個人情報の自衛隊への提供を断ることのできる自治体が増えています。18歳、22歳の全員に「自衛隊に入りましょう」という文書が届くのが良いことなのか。警察官や消防士、あるいは学校教員の場合でさえ、そんなダイレクトメールが届くことはありません。

おりおりの猫11

高所恐怖症でない猫。城壁からの景色はたしかに絶景で、晴れた日には地中海まで見えるとのこと。ここはポルトガル、リスボン郊外のシントラにあるムーア城です。地中海からイベリア半島までイスラム世界であったころに築かれた砦で、12世紀にキリスト教勢力に占領された後は荒廃。現在では修復されて、他の聖堂などとともに町全体が世界遺産になっています。砦のあちこちでくつろいでいる猫を見かけましたが、人間にとっては起伏のある砦のなかを歩くのはかなりの苦行です。